三種の神器とは
スーザックがデータマネジメント業務をする上で大切にしている「三種の神器」についてお話します。
ただし、SOP(Standard Operating Procedure)やDMP(Data Management Plan)といったドキュメントはすでにあるという前提です。(だったら”五種”の神器じゃないか・・・と言われそうですが)
三種の神器とは、次の3つです。
・TLF:Table, List, Figure
・DDT:Data Definition Table
・DRS:Data Review Specification
なお、一般的な略語ではなく、スーザックで使用している略語ですのであしからず。
TLFとは
研究結果を(その研究に参加していない)第三者に伝えるための表やグラフ等、いわゆる帳票類です。なお第三者には医療関係者のみならず、患者およびその関係者も含まれます。
これらの帳票類を研究開始前に手書きで作っておきましょう!という提案です。
研究結果を聞いた第三者(医師または患者など)が「自分も使ってみたいな」と思うかどうか。このとき第三者が抱く疑問は次のようなものだと思います。
・本当に効くの?=有効性への疑問
・本当に使って大丈夫?=安全性への疑問
・この研究結果は本当なの?=信頼性(研究の品質)への疑問
そんな疑問を払拭するために、TLFを予め考えておくことはかなり有効です。
TLFのメリット
予めTLFを作るメリットはたくさんありますが、代表的なものは次の通りです。
・研究の目的がより具体的になり、関係者の間で共有できる
・有効性、安全性、信頼性を第三者に伝える上で必要なデータ(測定項目、観察項目)が明確になる
・TLFを見ながら批判的吟味をすることができる(研究結果が理論武装できる)
つまり、プロトコールの作成のみならず、プロトコールのレビューおよび調査票(CRF/EDC)のデザインにも役立ち、これらの完成度があがることが期待されます。
TLFを作る具体的な手順
(1)プロトコールの目的、背景・経緯、主要評価項目、副次的評価項目、安全性評価項目のあたりを読み、研究仮説とTLFを考えます。次のようなことをイメージしながら読み込むと、より自分の認識が明確になると思います。
・現在、どのような人達が、どのようなことに困っているのか?
・どんな結果が検証されると、その人達は幸せを感じるか?
・この研究結果が公表されたあと、世界はどう変わるか?
・第三者に研究結果を伝えるためには、どんなTLFが最も適切にメッセージを伝えられるか?
(2)TLFを描いてみます。手段にこだわらず、とりあえず手書きでも問題ありません。うまく思い浮かばないときは、上述したように「第三者の疑問を払拭するTLFは何か」と自分にアプローチして考えると良いかもしれません。例えば、次のようなTLFが浮かんでくると思います。
・研究に参加した被験者の概要(性別、年齢、重症度など)を治療群ごとに比較できるように、被験者背景表を作る(Table)
・安全性が確認できるように、治療群ごとの有害事象一覧を作る(List)
・治療効果の比較ができるように、治療前と治療後の症状の変化をグラフにする(Figure)
(3)描いたTLFに対し、批判的吟味をします。批判的吟味(critical thinking)というと難しく感じるかもしれませんが、平たく言えば、各TLFを見ながら逆説的なツッコミをすれば良いと思います。例えば、次のような感じです。
・有効性が高かったのは、もともと軽症者が多かったのではないか?→ 治療群ごとの重症度分類表(Table)で理論武装
・実は併用された治療に差があったのではないか?→ 治療群ごとの併用治療一覧(List)で理論武装
・結果的には自然治癒しただけではないか?→ 治療群ごとの経時的推移図(Figure)で理論武装
このように、批判的吟味をすることで、結果を公表した際に受ける疑問等に対し、予め理論武装をしておけます。
(4)収集するべきデータ(調査項目、観察項目)を定義します。上述した(2)(3)の工程を繰り返しTLFができれば、それぞれのX軸、Y軸に必要な変数(データ)が明確になります。つまり、
・この研究結果として第三者に伝えたいメッセージ
・その結果をバックアップするための理論武装
・その結果を見たときに第三者が抱く疑問の払拭
これらに必要となる、収集するべきデータ(観察項目)が明らかになるのです。
そしてDDTの作成に続く
収集するデータの項目が決まれば、DDTの作成へと進むことができます。DDT作成の詳細につきましては、また次の機会にご紹介したいと思います。
いかがでしょうか?TLFを作る!というと何だか面倒に聞こえるかもしれませんが、自分の頭の中で漠然と思い描いている研究仮説、すなわち暗黙知を、他人が見てもわかる形式知に変える手段として、ぜひオススメです。
かといって研究開始前にTLFを100種類・・・なんて力む必要はありません。これが知りたいことだ!というメッセージを伝えるために最適と思われる1つのイメージを描いてみることからはじめませんか。