それってEvidence?

EBM(Evidence Based Medicine)という言葉が使われるようになって久しい。経験や勘だけに頼るのではなく、しっかりとしたEvidence(根拠)に基づいた医療という意味。これは、医療行為に限らず、自分の意見をまとめるときには「それってEvidence?」と自問自答することはとても大切で、普遍的に重要な考え方だと思います。たとえば新しいシステムを導入しようとすると「高齢者には難しい」という意見がでたとします。でも、それってEvidence?具体的に何人の高齢者が難しいと言っているの?と考えましょう。もしかしたら、高齢者では無い人が「きっと高齢者には難しい」という思い込みや決めつけで言っている意見なのかもしれません。

このように、Evidence Basedという考え方にはもちろん賛成ですが、、、妄信的に言葉が独り歩きするのは、いわゆる”EBM教”になってしまう危険を感じます。危険だと感じる理由は大きく2つあります。

1つめは、「経験=悪」とか「勘=悪」といった短絡的な決めつけは怖いということ。「根拠」は意思決定するための一つのパーツではありますが、全てではないと思うのです。人が最終的な意思決定に至るまでには「根拠」のみならず、「経験」「環境・資源」「価値観」などさまざまな因子が絡みます。なので、「しっかりしたEvidenceがあるのだから、この方法でやらないのはおかしい!やるべきだ!」とステレオタイプな意思決定は時として妥当でなくなると思います。

2つめは、そもそもEvidenceは連続性(不変:過去の傾向が未来も続く)を大前提としているということです。たとえば、天気予報は過去の膨大な気象データというEvidenceからかなりの精度で予測されます。しかし近年の気候変動にともない「晴れ」と予想していたのに「ゲリラ豪雨」が発生することもあります(ただし、最近ではゲリラ豪雨すらもかなりの精度で予測されますので、改めて技術の進歩には驚かされます)。このように、Evidenceに基づく判断は、暗黙のうちに連続性を前提としているのです。すなわち夏が近づけば暑くなり、冬になれば寒いということは無意識のうちに前提となっています。しかし、地球規模で予想もしなかった気候の大変動が起これば、この前提は成り立つでしょうか?

ということで、何らかの意思決定をするときに「それってEvidence?」と自問自答するEvidence Basedという考え方はとても大切です。
ただし、その際には少し立ち止まって次のことを自問自答する習慣も加えたいです。
・環境や資源(たとえば費用や負担など)、そして価値観といった因子も忘れずに検討する。
・そのEvidenceの前提は、意思決定しようとしている物事の前提と一致しているか確認する。
・この前提は不変だろうかと想像する。

だからこそ、Evidenceとして使用されるデータは、前提や素性をしっかり明確にしておくことが重要だと改めて思いますし、データマネジメントの責任の大きさを認識させられます。

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